白血病は、血液中の白血球が「正常な機能を持たないまま」「過剰に増殖するようになってしまった」病気であり、血液の悪性腫瘍(がん)です。白血病細胞が骨髄(血液を作る工場)にできると、増殖する白血病細胞で血液を作る力が抑えられてしまい、正常な血液の細胞(白血球・赤血球・血小板)が減ることで、感染症や貧血、出血傾向などが起こります。白血病細胞は自然になくなることはありませんので、治療をしないとこれらの症状が進行し、命にかかわります。
白血病には急性白血病と慢性白血病があり、急性白血病はさらに急性リンパ性白血病(ALL)と急性骨髄性白血病(AML)、その他の急性白血病に大別されます。ALLは小児患者さんで最も多い白血病です。ALL細胞の性質からB細胞性ALL(B-ALL)とT細胞性ALL(T-ALL)に分かれ、それぞれに応じた治療方法が開発されてきました。
日本における小児患者さんの1年間の発生数は、B-ALLでおよそ400-500人、T-ALLでおよそ100人、AMLでおよび160人とされています。
白血病を治すためには、薬を使った治療(=化学療法)を行います。ALLではステロイド剤と複数の抗がん剤を組み合わせて治療し、AMLでは複数の抗がん剤を組み合わせて治療します。いずれも通常の化学療法で治りにくい場合には、白血病細胞の特性に合わせた標的療法を行うこともあります。また、背中から針を刺して、抗がん剤が届きにくい髄腔に抗がん剤を直接注入する治療(髄注)も行われます。
まず、これらの治療により、白血病細胞が骨髄から確認できなくなる「寛解」という状態を目指します。寛解に到達することは第一の目標ですが、寛解を達成してすぐに治療を中断すると、高い確率で再び白血病細胞が増えてくる(再発する)ため、寛解に到達した後も化学療法を継続し(強化療法)、残っている白血病細胞の根絶に向けて治療することが治癒に必要です。化学療法に対する治療反応性や白血病細胞が持つ遺伝学的特性によって、白血病の手ごわさを予測することが可能となっており、手ごわさに応じてリスク分類を行って、リスク毎に治療の強さや期間を調整します。また、化学療法のみでは治癒率が低いと考えられる患者さんには、骨髄移植などの造血細胞移植が行われます。
B-ALL、T-ALL、AMLによって、リスクの分け方は異なりますので、詳しくは担当医にご確認ください。
急性白血病の治療に用いる薬剤で生じうる主な副作用は以下の通りです。
高血圧、糖尿病、感染症、消化性潰瘍、気分変調、骨粗鬆症、緑内障など
骨髄抑制、播種性血管内凝固、出血、血栓症、吐き気・嘔吐、下痢、口内炎、脱毛、発熱、感染症、発疹、結膜炎、薬に対するアレルギー、心臓・肝臓・腎臓・膵臓などの障害、神経系障害(けいれん、神経麻痺など)、二次がんなど
抗がん剤による副作用に加え、類洞閉塞症候群、血栓性微小血管障害、感染症、急性および慢性移植片対宿主病、生着不全、内分泌障害(性腺機能不全、汎下垂体機能不全、甲状腺機能低下)、二次がん、など
副作用に対してはできるだけ予防する対策を行います。実際に起こった場合は、速やかに適切な対処を行います。例えば、感染症に対しては抗生物質などを用いて予防や治療を行います。骨髄抑制にともなう赤血球・血小板の減少に対しては赤血球や血小板の輸血等を行います。抗がん剤による吐き気・嘔吐には制吐剤を投与します。これらを「支持療法」といい、白血病の治療を安全に行うための重要な部分です。
副作用の多くは、一時的なもので治療が終われば回復します。また、副作用の多くの場合は適切な対応により重症化を防ぐことができます。しかし、重篤な副作用をきたす可能性もあり、なんらかの症状を後遺症として残してしまうことや、命にかかわることもあります。また、内分泌障害や不妊、二次がんなどは、治療が終わった後に何年もたってから発生してくることがあります。