脳腫瘍:髄芽腫

どんな病気?

髄芽腫は、小脳と呼ばれる後頭部にあたる部位に発生する悪性脳腫瘍です。乳幼児に多く発生しますが、年長児や成人にも発生することが知られています。小脳はバランスをつかさどる脳なので、ふらつきが最初の症状になることがあります。また、脳脊髄液という液体が脳から脊髄に流れる出口を腫瘍が圧迫して、流れをせき止めて水頭症という問題を起こし、頭痛や嘔吐といた症状が出ることがあります。最近になって、実はこれまで髄芽腫と診断されてきた脳腫瘍の中に、少なくとも4つの性質が異なるサブグループがあることがわかってきました。

どうやって診断するの?

髄芽腫は症状とMRI検査で疑われますが、多くの場合は最初に腫瘍の摘出術が行われ、摘出した腫瘍を病理医が診断します。最近は腫瘍細胞の中で生じている遺伝子や分子の異常を調べることでサブグループの診断も行えるようになってきました。病理診断と同時進行で行うのが、病気の拡がりや摘出度を判定することです。小脳以外の大脳や脊髄に腫瘍が広がっている場合や、腫瘍が大きく残存している場合は、薬物や放射線による治療後に、病気が再発したり、最終的に命を落としたりしてしまう可能性が高いことがわかっています。また、腫瘍サブタイプや遺伝子異常も再発や死亡のリスクに関連しています。

どのように治療するの?

髄芽腫の治療は原則として、手術、薬物治療(化学療法)、放射線治療のすべてを行います。例外は、再発リスクが低いと考えられる腫瘍が診断された、一部の低年齢の乳幼児の患者さんです。手術でできるだけすべての腫瘍を摘出し、化学療法と放射線治療で、検査で検出できない顕微鏡レベルの残存腫瘍をすべて治療することが重要です。手術後に、どのような薬物をどれくらいの量を投与するか、どれくらいの量の放射線治療をどの範囲に行うかは、髄芽腫の拡がり、残存腫瘍の有無、髄芽腫のサブグループ、患者さんの年齢などの複雑な要素を加味して決定されます。多くの場合、約半年間の入院治療が必要となります。

どれくらい治るの?合併症は?

髄芽腫全体で、長期生存率は約70%です。この30年間で治療成績は飛躍的に改善しています。一方で、髄芽腫の長期生存者には、腫瘍そのものや治療によって、成長や発達などに対して、長期にわたって好ましくない影響を及ぼすことがわかってきました。

どんな臨床試験が行われている?

現在JCCGではMB19という略称で呼ばれる臨床試験が行われています。全国で診断される髄芽腫をすべて中央病理・遺伝子診断してサブタイプまで明らかにして、各患者さんの再発リスクをこれまでよりきめ細かく予測し、それぞれのリスクグループで放射線治療を省略または減弱するのを目的に、化学療法を強化する試みが行われています。その方法の一つとして、大量化学療法という特別な薬物治療が含まれています。

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