臨床研究とは、病気の解明、診断や治療の改善、患者さんの生活の質の向上などを目的として行われる、人を対象としたすべての医学研究を指します。後述する臨床試験のほかに、カルテなどの記録からそれまでのデータをまとめる研究や、患者さんへのアンケート調査なども臨床研究に含まれます。
小児がんは稀な病気であるため、医療者や患者さんが協力して研究を行っていくことが重要です。
臨床試験とは、新しい薬や治療方法、検査などを、実際に患者さんに使用して効果や安全性を評価するものを指します。 例えばある病気に対して、効果が高いもしくは副作用が少ないと思われる新しい治療方法が見つかっても、本当に効果が高いもしくは副作用が少ないのかは、多くの患者さんに対して治療を行って確かめる必要があります。また、すでに標準治療が確立している病気の場合は、新しい治療方法が標準治療よりも優れているのかを比較する必要があります。このような場合に行われるのが臨床試験です。
臨床試験の他に、「治験」という言葉をご存知の方もいらっしゃると思います。「治験」とは臨床試験のうち、新薬を日本で使えるように国に認めてもらう(厚生労働省から承認を得る)ために行われるものです。
小児がんは成人に比べると患者さんが少なく、まれな病気も多いため、臨床試験を行うためにはたくさんの施設で協力する必要があります。JCCGはオールジャパン体制で、ときには海外のグループとも協力しながら、小児がんへの臨床試験を行っています。
臨床試験ではより良い効果が得られるような新しい治療や検査を行います。しかし想定していたよりも効果が低かったり、想定外の副作用が出現したりする可能性もあります。このように臨床試験に参加される患者さんが受ける不利益を最小限にするために、複数の専門家が臨床試験の計画を厳しく審査したうえで、試験が開始されています。
治療や検査を実際に患者さんに行う臨床試験以外に、カルテなどのデータをまとめる研究や、アンケート調査なども臨床研究に含まれます。JCCGではこのような臨床研究も行っています。これらの研究では患者さんへのご負担はほとんどありませんが、貴重なデータを安全に運用できるような体制を整備しています。
現在行われている標準的な治療や検査も、今までの臨床研究に参加してくださった患者さんの協力によって確立されました。がんと闘う子どもたちのために、今日も世界中でたくさんの臨床研究が行われています。