遺伝性腫瘍

遺伝性腫瘍とは何ですか

がんを発症しやすい体質が原因で発症するがんのことを「遺伝性腫瘍」と呼びます。小児がんを発症するお子さんのおよそ10%が生まれつきがんを発症しやすい体質を持っていることが、最近の研究で分かってきました。この体質は「必ずがんになる」のような明確なものではありません。遺伝性腫瘍でなくてもがんを発症する方は多くいらっしゃいますので、遺伝的な体質は「がんになる確率(リスク)が相対的に高い」という関与をしています。

代表的な例の1つにリー・フラウメニ症候群があります。リー・フラウメニ症候群では、赤ちゃんから大人までの幅広い年齢層でいろいろな種類のがんを発症する確率が高くなります。逆に同じような年齢で、同じようながんになる遺伝性腫瘍もあります。患者さんごとに状況は異なりますので疑われる場合やご心配な時は担当医にご相談下さい。

どのような時に遺伝性腫瘍を疑いますか

①同じあるいは似たがんの家族歴がある、②小児期から複数の異なるがんになったことがある、③平均的な好発年齢より早くにがんになった、④がんに加えて他に特徴的な症状がある、⑤遺伝性腫瘍に特徴的ながんの種類である、といった状況がある時に遺伝性腫瘍を疑います。
また最近では、⑥がんの治療薬を見つけるためのがん遺伝子パネル検査から遺伝性腫瘍が疑われる場合もあります。

どのように診断しますか

お子さんの症状や病歴・家族歴などから診断される場合と、遺伝子検査を行ったうえで診断される場合があります。2.の①~⑥のいずれかに当てはまるなど、疑われる遺伝性腫瘍がある場合には、遺伝カウンセリングを行ったうえで、遺伝子検査で診断することを考慮します。保険診療で遺伝子検査が可能な遺伝性腫瘍は、網膜芽細胞腫、多発性内分泌腫症I, II型、遺伝性乳癌卵巣癌(2023年3月現在)に限られていますが、自費検査を受けたり、臨床研究に参加することで検査が可能な場合もあります。

遺伝性腫瘍だと治療法が変わりますか

多くの場合は遺伝性腫瘍でない場合と同様の治療を行いますが、治療法やフォローアップを変えた方が良い場合もあります。遺伝性網膜芽細胞腫ではより慎重に眼底検査を行い、治療終了後の二次がんにも注意します。リー・フラウメニ症候群では、可能であれば放射線を使わずに治療することが推奨されています。白血病の場合には、遺伝子検査を行うことが、血縁者ドナーの選択の際の有益な情報となることがあります。

遺伝性腫瘍と分かればどのような対策ができますか

それぞれの遺伝性腫瘍に合わせた特別メニューの検査(=サーベイランス)を行い、がんを早期発見し治療することが推奨されています。健康保険の適用はありませんので、まずは可能な範囲で行うことが勧められます。また普段からお子さんの遺伝性腫瘍の特徴を知っておき、注意すべき症状があれば早めに病院にいくことも大切です。

家族はどうすればいいですか

お子さんが遺伝性腫瘍と診断された場合には、きょうだいや親も同じ「がんを発症しやすい体質」を共有している可能性があります。まずはご家族の状況を把握して、どなたが同じ体質を持っている可能性があるのか、もしそうだとしたら遺伝子検査やサーベイランスなどについて、どのような対応策があるのかを検討することが勧められます。
受診中の病院に遺伝診療部門があれば、担当医を通して受診してみるのも良いと思います。

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