血液腫瘍:若年性骨髄単球性白血病(JMML)

若年性骨髄単球性白血病(JMML)について

若年性骨髄単球性白血病(JMML)は,血液中の白血球という細胞が無秩序に増えることで正常の血液が作られにくくなる、血液の悪性腫瘍(がん)のひとつです。

若年性骨髄単球性白血病(JMML)委員会とは

JCCG(日本小児がん研究グループ) JMML委員会は、若年性骨髄単球性白血病(Juvenile myelomonocytic leukemia: JMML )に対する、よりよい治療法の開発を目指して活動しています。

JMMLは、小児期のみにみられる疾患で、国内では1年間に約10例が発症します。古くは、若年性慢性骨髄性白血病と呼ばれたこともあり、長い間その病態も治療法も不明でした。JMMLは1990年代前半まではきわめて予後の不良な疾患でしたが、1997年頃から、各国の研究者による研究が精力的に行われ、病態解明・診断基準の作成・検査法の確立・治療法の開発が進みました。JMMLの患者さんの診断のためには、末梢血と骨髄の細胞の形態診断、細胞培養(コロニーアッセイ)、そして遺伝子検査を行うことが必須です。現在では、国際的に認められた診断基準のもと、適切な診断を迅速に行うことができるようになり、同種造血細胞移植の導入により生命予後は飛躍的に改善しました。しかしながら、未だ再発・治療合併症により不幸な転帰をとる症例も多く、更なる治療法の開発が求められています。

2010年にJCCGの前身であるJPLSG(日本小児白血病リンパ腫グループ)のなかに、JMML委員会が発足し、活動を開始し、JMML患者を対象とした国内初の多施設共同臨床研究であるJMML-11研究を遂行しました。2011年から2017年に診断された初発JMML患者さん28例が登録され、統一された前処置レジメン(ブスルファン、フルダラビン、メルファラン)による同種造血細胞移植を行い、欧米各国からの報告と同等の治療成績(3年全生存率:63%)が得られました。

2014年からはJCCGのJMML委員会として活動を継続しています。2021年7月には、移植前のアザシチジン療法の有効性と安全性を評価する前向き臨床試験(正式名称:若年性骨髄単球性白血病に対するアザシチジン療法の多施設共同非盲検無対象試験:JMML-20)を開始し、順調な症例登録が得られています。

委員長挨拶

現在、JMML委員会委員長を務めております名古屋大学小児科の村松秀城です。
大学院生時代に、JMMLの遺伝子解析研究に携わって以来、このまれな疾患に強い興味を持ち続けています。JMMLの分子学的病態の本質は、5つのRAS経路に属する遺伝子(PTPN11、KRAS、NRAS、NF1、CBL)の変異ですが、近年の遺伝学的解析法の進歩により、二次的遺伝子変異、DNAメチル化、受容体型チロシンキナーゼ(ALK、ROS1)が関与する融合遺伝子なども、JMMLの病態に関与することが明らかになってきました。今もなお、JMMLは診断も治療も難しく、いわば難攻不落の血液悪性腫瘍の一つです。治癒には骨髄破壊的前処置を用いた同種造血細胞移植が必要であり、長期生存例における晩期合併症も大きな課題です。

しかしながら、JCCG JMML委員会で臨床研究を現在行っているDNAメチル化阻害薬であるアザシチジンをはじめ、ようやくJMMLにおいても治療効果が期待できる薬剤の候補が増えてきました。JMML委員会では、後遺症なき長期生存の実現のために、今後も多施設共同臨床試験による治療開発を継続的に進めていきたいと考えています。


名古屋大学医学部附属病院小児科
村松秀城

委員一覧

血液腫瘍分科会委員一覧

臨床研究

活動報告

2024年1月 JMML-11試験の治療成績を論文化しました。
Sakashita K, et al. Transplant Cell Ther. 2024 Jan;30(1):105.e1-105.e10.
2021年7月 JMML-20試験を開始しました。

リンク集

小児慢性特定疾病情報センター 若年性骨髄単球性白血病
Rare Disease Database(英語)
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