固形腫瘍:ユーイング肉腫

ユーイング肉腫の概要

ユーイング肉腫ファミリー腫瘍(Ewing sarcoma family tumors; ESFT)は小児期から若年成人にかけて好発する骨もしくは軟部組織原発の悪性腫瘍で、原発性骨悪性腫瘍では骨肉腫に次いで2番目に多いものです。1921年にJames Ewingにより報告された骨原発の古典的Ewing肉腫に加え、軟部組織原発の骨外Ewing肉腫、原始神経外胚葉性腫瘍(PNET)と胸壁Askin腫瘍、Neuroepitheliomaが同じ分子生物学的遺伝子異常(キメラ遺伝子:EWS/FLI1、 EWS/ERG、EWS/ETV1、EWS/E1AF、EWS/FEVなど)を有することから、これらの腫瘍はESFTと一括して呼ばれるようになりました。

ユーイング肉腫の症状

病変部の腫脹や疼痛が主な症状です。ESFTの好発年齢は活動性の高い10代であり、成長痛や外傷による疼痛と判断され、診断までに数カ月かかることもまれではありません。

日本での治療研究

2003年に日本ユーイング肉腫研究グループ(JESS)が発足し、2004年から日本全国で多施設臨床研究(JESS 04)が開始されました。その活動は日本小児がん研究グループ(JCCG)のユーイング肉腫委員会に引き継がれ、2016年からJESS14臨床研究が開始されています。

ユーイング肉腫の検査

1.画像検査

診断には骨のX線写真やCT検査、MRI検査などの画像検査が行われます。骨転移の診断に骨シンチグラフィー、肺転移の診断に胸部CT検査、全身の転移の検索にPET-CT検査が行われることもあります。また、骨髄への転移の診断に骨髄検査が行われることもあります。

2.病理学的検査

診断を確定するためには、腫瘍の一部を摘出する腫瘍生検術が必須になります。摘出された腫瘍組織は、病理専門医により形態学的にESFTとして診断されます。免疫化学染色が診断の補助に有用です。

3.キメラ遺伝子検査

正常な組織にはないESFTに特徴的な遺伝子を検索します。ESFTに特徴的なキメラ遺伝子にEWS/FLI1、 EWS/ERG、EWS/ETV1、EWS/E1AF、EWS/FEVなどがあります。これらの検査は一般的に調べられるものではないため、大部分は臨床研究の中央病理診断で調べられています。

4.血液検査など

ESFTの診断に有効な腫瘍マーカーや血液検査項目はありません。

ユーイング肉腫の治療・治療成績

1.化学療法

ESFT は高い放射線感受性を有する腫瘍で、放射線治療は化学療法導入以前から標準治療でした。放射線治療単独では手術もしくは手術と放射線を組み合わせた治療に比べて局所再発率が高いと報告され、1980年代後半より積極的に外科治療が行われるようになりました。現在では、可能な限り原発巣の外科的切除を行い、切除縁や組織学的奏効割合に応じて最適な放射線治療を行うのが標準的な腫瘍の局所コントロール方針です。また、診断時に遠隔転移がなくても、微小転移を有していること多く、放射線治療と外科治療を組み合わせた局所療法に全身化学療法を併用した集学的治療の導入により生存率が大幅に改善してきました。現在、転移のない限局性ESFTでは5~6コースの術前化学療法の後に、外科治療を行い、組織学的反応性が不良、もしくは摘出時に十分な切除縁を確保できなかった場合は放射線治療を追加し、術後化学療法を8~11コース行う治療が標準的です。有効性が高い薬剤は、ビンクリスチン(VCR)、ドキソルビシン(DXR=アドリアマイシン:ADR)、シクロホスファミド(CPA)、イホスファミド(IFM)、エトポシド(VP-16)、アクチノマイシンD(Act-D)の6剤です。限局性ESFTには米国ならびに本邦ではVDC療法(VCR+DXR+CPA)とIE療法(IFM+VP-16)の交替療法が、標準的化学療法に位置付けられています。

2.手術療法

放射線治療単独では手術もしくは手術と放射線を組み合わせた治療に比べて局所再発率が高いという報告がなされるようになり、近年では積極的に外科的な腫瘍切除が行われるようになりました。切除時には、腫瘍からある程度の厚さの正常組織を介した、適切な切除縁での切除が理想とされています。体幹部発生の巨大腫瘍や頭頚部原発腫瘍などを除いては、可能な限り外科的切除を行い、切除縁や組織学的奏効割合に応じて最適な放射線治療を行うのが標準的な局所コントロール方針です。

3.放射線治療

Ewing肉腫は放射線治療がよく効くタイプの肉腫であり、手術や薬物療法とともに治療の3本の大きな柱のひとつとなっています。腫瘍が存在する臓器の機能や形を保ちつつ病巣を治療することができるという大きな利点があり、根治する治療としてだけでなく、病巣による痛みなどの症状緩和まで、治療の様々な場面で幅広く活用されています。
放射線治療は、手術が腫瘍とその発生した臓器を周囲の正常組織を含めて切除するのに対し、放射線治療では正常組織を含めた臓器を残して治療できるため、形態や臓器の機能を温存できます。放射線治療の副作用には治療中~直後に出現するタイプと時間がたって出現するタイプがあります。二次がんのリスクがあることも問題点です。最近は高度な放射線治療が行われることで隣接する正常組織への影響を最小限にすることができるようになっています。三次元原体照射 (3DCRT) や強度変調放射線治療(IMRT)、粒子線治療などいろいろな方法より、病巣の広がりや部位などを考慮して適切な方法を選択します。

4.予後

限局性ESFTの5年無病生存率は60~70%と報告されています。転移性ESFTの3年無病生存率は20~30%程度です。

「患者さんやご家族のみなさまへ」トップへ戻る
ページトップ