サイエンスと情熱の力で、
こどもたちの未来を拓く!
JCCGの皆様、サポーターの皆様、この度、JCCGの理事長に選出された埼玉県立小児医療センターの康勝好(こうかつよし)です。初代理事長の水谷修紀医師、第2代理事長の足立壮一医師、第3代理事長の真部淳医師を継ぎ、4代目の理事長として責務を果たすことになりました。副理事長の田尻達郎医師、岡本康裕医師はともに実務経験豊富です。新しく血液腫瘍分科会運営委員長に就任した富澤大輔医師、固形腫瘍分科会運営委員長の米田光宏医師ともども、新体制で活動して参ります。これから2年間、よろしくお願いいたします。
JCCGはJPLSG(日本小児白血病リンパ腫研究グループ)と小児固形がん臨床試験共同機構が1つになり、2014年12月にNPO法人としてスタートしました。小児がんの治療と研究を専門とする日本の全ての大学病院、小児病院、総合病院が参加している国内唯一の団体です。小児科、小児外科、脳神経外科、整形外科、放射線科、病理科、生物統計学の専門家、基礎研究者など、小児がんに関連する全ての領域の専門家が集まっています。
このようなJCCGの活動を支えるためには、免疫診断、病理診断、画像診断などの中央診断システム、データセンター、腫瘍検体保存、ゲノム解析システムが必要であり、また、臨床研究管理者、データマネージャー、倫理専門家のサポートも重要です。JCCGにはこれらを遂行するさまざまな職種の専門家が参画しています。現在、JCCGの参加施設は200を数え、発足後の10年間で臨床試験にご協力いただいた患者さんの数は、白血病などの血液腫瘍では22,891名、脳腫瘍などの固形腫瘍では10,772名にのぼります。その間、血液腫瘍は52件、固形腫瘍は39件、合計91件の臨床試験に取り組んでまいりました。JCCGにはそのデータが蓄積されており、一人一人の患者さんのフォローアップに役に立つのみならず、将来の新しい研究に生かすことができます。研究の多くは競争的資金を獲得して運営されますが十分ではなく、ありがたいことに、「小児がんのよりよい治療のために」と、ご寄付をくださる方も年々増えてきました。
最近ではJALSG(成人白血病治療共同研究機構)との合同臨床試験が軌道に乗ってきました。小児とAYA世代の患者さんを対象にしたT細胞性急性リンパ性白血病の臨床試験の結果はとても良好で、2023年5月に国際科学誌『THE LANCET Haematology』(ザ・ランセット・ヘマトロジー)に成果が掲載されました。また、ダウン症候群合併白血病、1歳未満の乳児に発症した急性リンパ性白血病、肝腫瘍、胚細胞腫瘍など、国際共同臨床試験を積極的に計画し、遂行することも多くなっています。
現在の課題は、臨床試験を継続するための基盤がいまだに脆弱であることです。臨床試験の遂行のために公的資金が得られる一方、中央診断、データセンター、検体保存などの研究を支える基盤への資金は十分ではなく、運営は困難です。そのため、広報活動を行いながら、行政、民間企業、市民の皆さんの継続的な支援が得られる仕組みを作りたいと模索しているところです。
一方ここ数年で前向きな変化もあります。小児がんのドラッグラグ問題が注目されるようになりました。国立がん研究センターを中心に産学官の連携も少しずつ進んでいます。またゲノム医療に対する関心の高まりとともに、小児がんのゲノム研究へのサポートが充実してきました。いまこそこれらの動きと基盤の整備とを結びつけていきたいと考えています。
これまで私は、急性リンパ性白血病に対する臨床試験を中心に活動し、またこの2年間は運営委員長として真部前理事長とともに、グループ活動の運営にあたってきました。今後は理事長としてグループ全体の活動をさらに充実させるように努めていきたいと思います。 小児がんの治療成績の向上には、基礎研究、臨床研究、個々の医療人の技量と情熱、患者さんをサポートする多職種の連携、そしてそれらを応援する市民、地方自治体、国の全てがハーモナイズ(調和)することが必須です。今後は看護師、薬剤師らコメディカルスタッフの参画と、より一層の協力をお願いしたいと考えております。また、臨床試験の計画段階から患者さん・ご家族や市民の方々に参画していただき、開かれた臨床試験グループを目指していきたいと思います。
サイエンスと情熱の力で、こどもたちの未来を拓く!を合言葉に、皆様と力を合わせて小児がん治療研究に取り組んでいきたいと思います。JCCGへのご支援、ご協力をよろしくお願いいたします。
2025年7月1日 康 勝好
JCCG 理事長
康 勝好