脳腫瘍:上衣腫

どんな病気?

脳の周りや脳の中には髄液という液体がありますが、脳の中の髄液をためている脳室という構造があります。この脳室壁の細胞が上衣細胞で、それに由来するのが上衣腫です。小児にも成人にも発生します。多くは脳室内もしくは脳室に接して発生します。髄液は脳脊髄全体に分布しており、上衣腫細胞が髄液に乗って離れたところに飛ぶ「播種」をきたしやすいという特徴もあります。

どんな種類があるの?

病理学的には以前から低悪性度の上衣腫と高悪性度の退形成性上衣腫に分類されていました。現在は分子分類がすすみ、大脳(小脳テントより上)に発生する場合と、テント下(小脳・第四脳室)に発生するものは、遺伝子的に別な腫瘍であると考えられるようになってきています。テント上下で分類され、テント下もPFAとPFBの2型に分類されます。PFAは小児に多く側方に進展する傾向が強く比較的悪性度が高く、PFBは年長者・成人に多く正中部発症で予後が良い傾向にあるようです。

どのように治療するの?

上衣腫の治療は手術摘出が中心となります。いかに残存無く腫瘍を摘出できるかが、治療成績に関わってきます。現在までのところ、確実に有効と言える抗がん化学療法がないので、有効な補助療法は放射線治療となります。年少児での放射線照射は晩期合併症につながるものの、テント下(後頭蓋窩)発生の場合、予後も悪いため局所の放射線治療も考慮されます(大脳には照射があたらないので知的機能低下の合併症は少ないと考えられるため)。

どれくらい治るの?合併症は?

手術+放射線治療を受けた症例の5年生存割合は上衣腫で約70%、退形成性上衣腫で約 30%とされます。しかし上記の分子分類によりかなり異なるようです。播種をきたしやすく、その場合の治療は困難を極めます。一方でテント上の上衣腫で手術摘出のみで補助療法なしで長期生存が得られる場合もあります。

どんな臨床試験が行われている?

このようにひとくちに上衣腫といっても様々で、腫瘍の部位や性質によって治療強度を変える必要がありそうです。JCCGでは2021年まで上衣腫の発生部位と手術摘出後の残存腫瘍の有無により、治療法を選択する臨床試験を行ってきました。これはアメリカでの臨床試験に準じたもので、現在結果を解析中です。現在JCCGでは、上衣腫を対象とした新しい臨床試験を計画しています。

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