脳腫瘍は小児がんの中で白血病についで多い腫瘍です。一口に脳腫瘍といっても非常に多くの組織型が含まれており、組織型ごとの放射線や化学療法への感受性が異なるため、それぞれ治療法が異なります。放射線、手術、化学療法を適切に組み込んだ集学的治療が必要になります。
皆様こんにちは。2021年よりJCCG脳腫瘍委員会委員長を担当させていただいております、北里大学脳神経外科・隈部俊宏と申します。どうぞよろしくお願い申し上げます。
JCCG脳腫瘍委員会は、WHO2016が出版され、遺伝子解析が病理診断に必須になった時を大きな転換点として、活発な活動が開始されました。小児脳腫瘍学・原純一先生と脳神経外科・西川亮先生が委員長としてとりまとめを行い、小児科・脳神経外科・放射線治療科・病理診断科・分子生物学それぞれの先生方が集結しました。日本で行われている小児脳腫瘍摘出術にて得られた標本の半分くらいがJCCGで行われている固形腫瘍観察研究に登録されている現状は、すごいactivityであると思われます。さらに2023(令和5)年度にはAMEDから下記のような4つの資金援助を得られたことによって、研究を進める上で素晴らしい環境となっています。さらなるstep upを目指す時期となりました。
・ 「髄芽腫、非定型奇形腫様ラブドイド腫瘍、上衣腫に対する標準治療開発を目的とした多施設共同研究」(山崎夏維班)
・ 「初発中枢神経原発胚細胞腫瘍に対する化学療法併用放射線治療の低侵襲化に関する研究開発」(荒川芳輝班)
・ 「小児上衣腫に対する手術摘出度と分子学的マーカーを用いた治療層別化による集学的治療の安全性と有効性確立に向けた研究開発」(齋藤竜太班)
・ 「びまん性内在性橋グリオーマ(DIPG)のレジストリ構築および緩和ケアの実態解明を目的とした多施設共同前方視的観察研究」(鈴木智成班)
多くの先生方が関与されております。現在のJCCG脳腫瘍委員会は下記のような体制を作っております。
組織は金平糖のようなものだと思います。興味を持った一人一人の先生が自分の得意とする領域で力を出しきっていくことが一番大事です。当然のことながら、意見の対立や、どうしても協力できないといった状況を生じ、全体が丸くまとまることから遠ざかることもあるでしょう。しかし、最後の最後は有機的な繋がりの中で仕事をしていって欲しいと願っています。きっとできるはずです。そのためには、我々は「小児脳腫瘍の治療をなんとか進めたい・良くしたい」と思っている初心を忘れないことが必要です。目の前にいる脳腫瘍を担ったこどもに対して、一体どういう検査・治療をすべきなのか、将来何に気を付けていくべきなのか、最終的にどういう予後をたどるのか、我々は常に最新で精緻な情報を提供し、最良の結果を出したいと思っているはずです。それがJCCG脳腫瘍委員会として、日本全体の先生方が集まって仕事をしている原点のはずです。
おそらく日本国民は苦しい状況になった時ほど、人は繋がり、助け合い、まとまって、次の方策を編み出す特異な人種なのではないでしょうか。何をあまいことを言っているんだと批判されるかと思いますが、楽しんで仕事しましょう。きっと我々にはできるはずです。様々な問題が析出している日本を支えていけるのは、興味を失わない一人一人の人間の存在だと思います。
一方、日本の欠点は、個人の努力に頼りきってしまい、システムを作ることが苦手ということでしょうか。日本国家にはそれぞれ頑張っている人を大事にして欲しいことは確かです。微力ではありますが、なんとかシステムを作っていくことを模索していくことをお約束致します。
なんだか政治家の演説のようになってしまいましたが、皆で力を出し合って小児脳腫瘍治療において一歩でも前に進みましょう。何しろWEB会議を開くと300人もの先生が参加されるようになっているのですから。大丈夫。
令和5年12月末
JCCG脳腫瘍委員会・委員長
北里大学医学部脳神経外科・教授
隈部俊宏
日本全体がまとまって、小児脳腫瘍研究及び治療開発を進めようという理念のもとに集まったJCCG脳腫瘍委員会の偉大な創始者である原 純一先生・西川 亮先生の後を継がせて頂きました。2021年5月より、JCCG脳腫瘍委員会・委員長を担当させていただいております北里大学医学部脳神経外科・教授・隈部俊宏です。JCCG脳腫瘍委員会は急速にactivityが高まっており、幸いにして新しい研究に対してもAMEDからの資金提供を得ることできています。しっかりとした実績を残して、更なる発展を目指したいと考えております。何よりも人の顔が見え、有機的なcommunityを形作りたいと願っております。
北里大学医学部脳神経外科 教授
隈部 俊宏
2023年12月 | The 2023 Winter International Scientific Symposium of the Taiwan Pediatric Brain Tumor ConsortiumにおいてCNSGCT2021試験の紹介を行いました。 |
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2023年4月 | 第126回日本小児科学会学術集会において“分野別シンポジウム1小児がん治療の最前線”の演題で口演をしました。 |
2023年1月 | Web開催されたASNO-SNOでInaugural ASNO-SNO Clinical trials Scholars Course & Workshop for Neuro-Oncology Professionals A joint ASNO-SNO Initiative Conducting Clinical Trials/Studies in Specific Study Populations Pertaining to Neuro-Oncology “Central nervous system germ cell tumors”の演題で講演しました。 |
2022年12月 | 第40回日本脳腫瘍学会学術集会においてCNSGCT2021試験の紹介を行いました。 |
2023年10月 | ソウルにて開催された2022 the Korean Society of Pediatric Hematology-Oncology Autumn Meeting JSPHO/KSPHO Joint Symposiumにおいて”Central nervous system germ cell tumors”の演題で口演しました。 |
2023年3月 | 米国サウスカロライナにて開催された第23回国際脳腫瘍カンファレンスで"A Practical Implementation of Methylation Classification in the Central Diagnostic Review of Pediatric Brain Tumors." の演題で口演しました。 |
2022年3月 | 6th Quadrennial Meeting of the World Federation of Neuro-oncology Societies (WFNOS)にて、小児固形腫瘍観察研究における脳腫瘍中央診断の結果を発表しました。 |
2022年5月 | Surgical Neurology International誌に Handa H 他、 “Molecular analyses of rosette-forming glioneuronal tumor of the midbrain tegmentum: A report of two cases and a review of the FGFR1 status in unusual tumor locations.” の論文を発表しました。 |
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2023年5月 | JCCGウェビナーで「希少遺伝子変異を視野に入れた中枢神経系原発腫瘍の診断と治療のupdate」の講演を行いました。 |
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2022年9月 | JCCGウェビナーで「小児脳腫瘍の分子分類」の講演を行いました。 |
2022年7月 | CNSGCT2021試験(中枢神経原発胚細胞腫瘍)を開始しました。 |
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2020年10月 | AT20試験(非定型奇形腫様ラブドイド腫瘍)を開始しました。 |
2020年5月 | MB19試験(髄芽腫)を開始しました。 |
日本小児神経外科学会 一般の方へ 疾患メニュー H.腫瘍 |
小児慢性特定疾病情報センター |
日本脳腫瘍学会 2021年版 脳腫瘍診療ガイドライン |
がん情報サービス 脳腫瘍(小児) |
小児脳幹部グリオーマの会 |
近畿小児脳腫瘍の患者会・経験者グループ miracle Brain |
小児脳腫瘍の会 |
小児期発症 血液・腫瘍性疾患患者のための成人医療移行支援ガイド―脳腫瘍(小児科学会/小児血液・がん学会) |
小児脳腫瘍治療後の神経心理学的合併症についての手引き(JCCG脳腫瘍委員会神経心理評価WG編) |
家族向け手引き |
治療サマリー・フォローアップ手帳 |