固形腫瘍:脳腫瘍

脳腫瘍について

脳腫瘍は小児がんの中で白血病についで多い腫瘍です。一口に脳腫瘍といっても非常に多くの組織型が含まれており、組織型ごとの放射線や化学療法への感受性が異なるため、それぞれ治療法が異なります。放射線、手術、化学療法を適切に組み込んだ集学的治療が必要になります。

脳腫瘍委員会とは

皆様、こんにちは。2021年5月よりJCCG脳腫瘍委員会の委員長を務めております、北里大学医学部脳神経外科教授の隈部俊宏です。委員長の任期は2年間で、最長3期までと定められており、今回が最後の任期となります。

前回のご挨拶では、「何よりも人の顔が見える、有機的なコミュニティを築きたい」と、分かるような分からないような表現で申し上げましたが、その思いは今も変わっておりません。2014年に発足したJCCGの理念は、「全国の研究機関や病院が経験を持ち寄り、日本全体が一つの病院のように機能する仕組みの構築」であり、この理念は脳腫瘍委員会においても同様です。
この間、脳腫瘍委員会には多くの施設が参加し、組織としての明確化と強化が図られてきました。
現在、AMEDより以下の4つの臨床研究への支援を受けております。
1. 髄芽腫、非定型奇形腫様ラブドイド腫瘍、上衣腫に対する標準治療開発を目的とした多施設共同研究(山崎夏維班)
2. 初発中枢神経原発胚細胞腫瘍に対する、分子分類に応じた化学療法併用放射線治療の低侵襲化に関する研究開発(荒川芳輝班)
3. びまん性内在性橋グリオーマ(DIPG)のレジストリ構築および緩和ケアの実態解明とDX導入効果の検証を目的とした多施設共同研究(鈴木智成班)
4. 小児上衣腫に対する手術摘出度と分子学的マーカーを用いた治療層別化による集学的治療の安全性と有効性確立に向けた研究開発(齋藤竜太班)
また、小児固形腫瘍観察研究では年間約350件の症例が登録されており、これに対する病理・遺伝子診断が継続的に行われています。その結果として、極めて大規模なデータベースが構築され、JCCGデータセンターには多大なるご尽力をいただいております。さらに、近年必須となっているメチル化解析も推進されており、固形腫瘍観察研究で得られた組織を用いた探究的な生物学的研究も、バイオロジーワーキンググループを中心に精力的に展開されております。現在、研究成果のアウトプットも徐々に形になりつつあります。
近年、小児脳腫瘍における晩期合併症への対応は極めて重要視されるようになり、それに対応すべく新たに晩期合併症ワーキンググループ(神経心理評価WGを含む)が結成されました。また、臨床研究を進める上で、画像評価の客観性の重要性が増しており、画像中央診断ワーキンググループも大幅に強化されています。さらに、将来の臨床研究開発を見据え、シーズ開発WGや次期髄芽腫・ATRT対象の臨床研究開発WGでは、多くの先生方による熱い議論がほぼ毎月展開されています。
放射線療法委員会の先生方には、臨床研究における放射線治療の安全性を常に確保していただくとともに、治療成績を損なうことなく晩期合併症を最小限に抑える新たな照射法の考案にもご尽力いただいております。
これらの活動は、渉外・広報委員会による広報、国際委員会による将来の国際共同研究との調整、監査委員会による事務的チェックなど、多方面の支援により支えられております。
また、JCCG放射線療法委員会、画像診断委員会、病理診断委員会、支持療法委員会からご推薦いただいた委嘱委員の先生方からは、我々の活動に対する客観的評価とともに、学術的なご助言を頂戴しております。
このように、JCCG脳腫瘍委員会は、多くの先生方のご尽力により、ますます発展を遂げています。
ただし、組織の拡大に伴い、「顔の見える有機的なコミュニティ」の構築がやや難しくなるのも事実です。また、時には意見の対立や問題が生じることもあるでしょう。しかし、私たちは皆、小児脳腫瘍治療の改善を志す同志であることを、どうか忘れないでください。目の前の対立に捉われることなく、私利私欲を捨て、小児脳腫瘍医療の未来を共に見据えてまいりましょう。


令和7年7月末
JCCG脳腫瘍委員会 委員長
隈部俊宏

委員一覧

脳腫瘍委員会委員一覧

臨床研究

治療開発マップ

活動報告

学会発表

2023年12月 The 2023 Winter International Scientific Symposium of the Taiwan Pediatric Brain Tumor ConsortiumにおいてCNSGCT2021試験の紹介を行いました。
2023年4月 第126回日本小児科学会学術集会において“分野別シンポジウム1小児がん治療の最前線”の演題で口演をしました。
2023年1月 Web開催されたASNO-SNOでInaugural ASNO-SNO Clinical trials Scholars Course & Workshop for Neuro-Oncology Professionals A joint ASNO-SNO Initiative Conducting Clinical Trials/Studies in Specific Study Populations Pertaining to Neuro-Oncology “Central nervous system germ cell tumors”の演題で講演しました。
2022年12月 第40回日本脳腫瘍学会学術集会においてCNSGCT2021試験の紹介を行いました。
2023年10月 ソウルにて開催された2022 the Korean Society of Pediatric Hematology-Oncology Autumn Meeting JSPHO/KSPHO Joint Symposiumにおいて”Central nervous system germ cell tumors”の演題で口演しました。
2023年3月 米国サウスカロライナにて開催された第23回国際脳腫瘍カンファレンスで"A Practical Implementation of Methylation Classification in the Central Diagnostic Review of Pediatric Brain Tumors." の演題で口演しました。
2022年3月 6th Quadrennial Meeting of the World Federation of Neuro-oncology Societies (WFNOS)にて、小児固形腫瘍観察研究における脳腫瘍中央診断の結果を発表しました。

論文

2022年5月 Surgical Neurology International誌に Handa H 他、 “Molecular analyses of rosette-forming glioneuronal tumor of the midbrain tegmentum: A report of two cases and a review of the FGFR1 status in unusual tumor locations.” の論文を発表しました。

講演

2023年5月 JCCGウェビナーで「希少遺伝子変異を視野に入れた中枢神経系原発腫瘍の診断と治療のupdate」の講演を行いました。
2022年9月 JCCGウェビナーで「小児脳腫瘍の分子分類」の講演を行いました。

臨床試験

2022年7月 CNSGCT2021試験(中枢神経原発胚細胞腫瘍)を開始しました。
2020年10月 AT20試験(非定型奇形腫様ラブドイド腫瘍)を開始しました。
2020年5月 MB19試験(髄芽腫)を開始しました。

リンク集

病気に関する情報

日本小児神経外科学会 一般の方へ 疾患メニュー H.腫瘍
小児慢性特定疾病情報センター
日本脳腫瘍学会 2021年版 脳腫瘍診療ガイドライン
がん情報サービス 脳腫瘍(小児)

家族会

小児脳幹部グリオーマの会
近畿小児脳腫瘍の患者会・経験者グループ miracle Brain
小児脳腫瘍の会

移行期・支援

小児期発症 血液・腫瘍性疾患患者のための成人医療移行支援ガイド―脳腫瘍(小児科学会/小児血液・がん学会)

神経心理合併症の手引き

小児脳腫瘍治療後の神経心理学的合併症についての手引き(JCCG脳腫瘍委員会神経心理評価WG編)
家族向け手引き

治療サマリー・フォローアップ手帳

治療サマリー・フォローアップ手帳
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