小児肝がんは、小児期に肝臓の中に悪性腫瘍(がん)ができる疾患で、代表的なものとして次の2種類があります。
・肝芽腫:小児期に特有の肝がんで、通常5歳未満の小児に発生します。
・肝細胞がん:成人にもみられる肝がんで、あらゆる年齢の小児に発生します。
JCCG肝腫瘍委員会(旧JPLT)は,JCCG(日本小児がん研究グループ)のなかで、小児の肝腫瘍に対してより良い治療を目指して開発を続けている研究グループです。2014年にJCCGが発足する以前も、「JPLT(Japan Pediatric Liver Tumor group;日本小児肝癌スタディーグループ)として20年以上にわたり活動してきました。
JCCG肝腫瘍委員会では主に肝芽腫と肝細胞癌を対象とする臨床試験を行なっています。臨床試験では標準治療の確立や新しい治療法の開発、さらには将来のより良い治療につながる基礎的・橋渡し研究に取り組んでいます。小児肝腫瘍は世界的にも稀な腫瘍でもあるため、私たちはヨーロッパや北米の小児肝腫瘍のエキスパートと手を取り合って、臨床試験や研究に取り組んでいます。このため、世界の先進国で行われている臨床試験に日本からも参加できるのが大きな特徴です。
小児肝癌は、小児の肝臓に発生するまれな悪性腫瘍で、その大部分が肝芽腫と呼ばれる小児に特有な腫瘍で、一部に成人型肝癌が含まれ、日本では、年間50~60例の発生があります。
1980年代までは手術による完全切除が唯一の治療手段でしたが、1990年代になり、抗癌剤を併用することで、従来、手術不可能であった腫瘍や、転移のある腫瘍も治癒する症例が報告されるようになり、手術後の腫瘍の再発率も減少してきました。ただし、当時は発生頻度の低い腫瘍を、全国の各施設が独自に治療を行っていたために、日本全体の長期的な治療成績やその問題点が不明のままでした。小児肝癌の治療成績向上にはグループスタディによる研究が必須であるとの観点から、1989年6月、これに強い関心を持つ数名の小児外科医により発起人会が持たれ、スタディグループ発足の準備が進められ、小児肝癌に対する治療法の改善を目指し、1991年に日本小児肝癌スタディグループ(JPLT)が全国規模で結成されました。これが今のJCCG肝腫瘍委員会のはじまりです。
JPLTは小児肝癌の治療成績向上を目指して、JPLT-1(1991年〜)、JPLT-2(1998年〜)、JPLT-3(2013年〜)、JPLT-4(2018年〜)と、継続してより良い治療の開発を目指して臨床試験を行い、より良い治療法を開発してきました。その甲斐があって、この間に代表的な小児肝癌である肝芽腫全体の生存率は80%をこえるにまで向上しました。
現在JCCG肝腫瘍委員会では、日本にとどまらず世界の大規模な研究グループと協力して、国際共同臨床試験を実施しています(JPLT-4/PHITT)。アメリカのCOG、ヨーロッパのSIOPELという二つの大規模なグループを牽引する世界のエキスパートと肝腫瘍委員会のメンバーが手を組んで、一から新しい試験を設計しました。世界がひとつとなって、一人でも多くの患者さんに最善の治療法を届けられるように研究に取り組んでいます。
JCCG肝腫瘍委員会 委員長
菱木知郎
2023年3月 | JPLT3試験の画像診断エキスパートによる中央画像診断の成果がPediatric Radiology誌に掲載されました。 |
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2022年2月 | JPLT3試験の外科療法に関して小児肝腫瘍手術のエキスパートによる推奨治療の成果がCancers誌に掲載されました。 |
2022年2月 | JPLT3-H試験の成果がPediatric Blood and Cancer誌に掲載されました。 |
2021年9月 | JPLT-1,JPLT-2試験に参加した患者さんの遺伝子解析の結果がNature Communications誌に掲載されました。 |
2020年8月 | JPLT-2試験の長期フォローアップを含めた結果がJournal of Clinical Oncology誌に掲載されました。 |