白血病は、血液中の白血球が「正常な機能を持たないまま」「過剰に増殖するようになってしまった」病気であり、血液の悪性腫瘍(がん)です。
急性リンパ性白血病(ALL)は、白血病のうちリンパ球になるはずの細胞に異常が起こり、がん化した病気で、小児患者さんで最も多い白血病です。
JCCG急性リンパ性白血病(ALL)委員会では、日本中の研究者が協力し、海外の研究グループとも連携してこどものALLの治療成績向上のための研究を行っています。
こどものALLは、世界中の研究グループで様々な臨床研究が行われたことにより、20世紀後半から飛躍的に治療成績が向上しました。日本でも以前は日本国内で複数のグループがそれぞれ研究を行っていましたが、2005年にオールジャパンのALL研究グループである日本小児白血病リンパ腫研究グループ(JPLSG)ALL委員会が発足しました。2014年に固形腫瘍の治療研究グループとJPLSGが統合しJCCGが発足したことに伴い、現在のJCCG ALL委員会となっています。ALL小委員会、Ph1ALL小委員会、乳児ALL小委員会で構成され、相互に議論を共有しながら臨床研究を実施しています。
急性リンパ性白血病(ALL)は、小児期に発症するがんの中で最も多くみられる疾患です。白血病には「不治の病」のイメージがあるかもしれません。ですが、これまでの臨床研究の積み重ねで、その治癒率は向上しています。「必ず全員が治る」までは到達していませんが、多くの場合で「治す」ことを目指して治療に取り組める疾患になりました。
このようなALLの治癒率の改善には、病態研究(白血病がどのようにして発症し、どのように経過するのか)と臨床研究(白血病をどのように治療すればいいのか)の積み重ねが貢献してきました。病態研究の成果を臨床研究につなげ、臨床研究でみられた課題を病態研究で解明する、相互の循環が治療の進歩につながっています。これらの研究は、多くの研究者や臨床医の努力、そして患者さん・ご家族のご協力によって成り立っており、それを支援する社会によって支えられています。
わたしたちは、これらの先輩方の積み重ねの上に立ち、ひとりでも多くの子供たちが元気に治ることを目指していきます。
わたし自身は、学生の時に、小児科の病棟で白血病のこどもたちにであったことをきっかけにして、白血病治療の専門家になろうと決断しました。その後、大学院での研究生活を経て、いまでは臨床と研究を両立しています。病気に向き合っている子どもたちに、その時点でできるもっともいい治療を提供することを目指しています。そのために、知識を常に更新して深め、それを基に科学的な思考をし、常に自分を向上させることを意識しています。また、治療を受けるこどもたちとその親が、どのような病気でどのような治療を受けているのかを、なるべく分かりやすいように説明し、必要な心配はともに共有したうえで、少しでも不安を軽くできるように心がけています。
小児がんの治療と研究に携わり、こどもたちが元気で治っていく過程を手伝えることが、何よりのやりがいです。一方で、残念ながら治らないこどもたちの残された時間を、いいものにできるように手伝うことにも、とても意義を感じています。
研究と臨床の進歩を相互に結びつけることで、さらなる治療の進化を目指しています。ALLの治療にかかわるみんなが、それぞれの力を結集したチームを作ることが必要です。わたしたちのチームの取り組みが、ひとりでも多くのこどもたちの未来に光をもたらすことを願っています。
東京大学医学部附属病院小児科
加藤元博
2023年12月 | 第65回米国血液学会において、JPLSG ALL-B12試験の結果を報告しました。 |
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2023年5月 | Lancet Hematology誌にJPLSG ALL-T11試験の結果が掲載されました。 |
2021年12月 | 第63回米国血液学会において、JPLSG ALL-Ph13試験の結果を報告しました。 |
2021年8月 | JCCG-ALL-T19試験を開始しました。 |
2021年7月 | JCCG-ALL-B19試験を開始しました。 |
2020年10月 | Blood誌にJPLSG MLL-10試験の結果が掲載されました。 |