急性リンパ性白血病(ALL)の解説

どんな病気?

白血病は、血液中の白血球が「正常な機能を持たないまま」「過剰に増殖するようになってしまった」病気であり、血液の悪性腫瘍(がん)です。
急性リンパ性白血病(ALL)は、白血病のうちリンパ球になるはずの細胞に異常が起こり、がん化した病気で、小児患者さんで最も多い白血病です。ALL細胞の性質からB細胞性ALL(B-ALL)とT細胞性ALL(T-ALL)に分けられ、それぞれに応じた治療方法が開発されてきました。また、B-ALLの中でもPh1(フィラデルフィア染色体陽性)ALLと呼ばれるALLや、1歳未満の乳児ALLには、別の治療方法が開発されています。最近は様々な検査によって詳細に解析を行うことで、さらに細かく分類することが可能になりました。このように、細かい分類のそれぞれに応じて適切な治療をすることが重要です。
日本における小児ALL患者さんの1年間の発生数は、B-ALLでおよそ400-500人、T-ALLでおよそ100人とされています。

どんな症状が出るの?

正常な白血球は主に免疫力を担っています。ですので、少なくなってしまうと、「感染症にかかりやすくなる」「感染症が治りにくくなる」「通常の免疫力があればかからないような感染症になる」などの症状が出ます。白血病と診断された時には、白血病細胞が血液の中にもたくさんみられることがあります。白血病細胞は通常の血液検査では白血球に数えられてしまいますので、診断された最初のころは白血球の数はむしろ多くなっていることもありますが、正常な白血球は減っていることがほとんどです。
正常な赤血球は主に酸素を運搬する働きをしています。酸素は細胞が機能するために必須なので、少なくなってしまうと、いわゆる「貧血」の症状として顔色が悪くなり、だるさやめまいなどが現れます。過度に少なくなると、体の臓器が正常に機能することができなくなってしまいます。
正常な血小板は主に出血を止める役目を果たしています。ですので、少なくなってしまうと血が止まりにくくなり、大量に出血してしまったり、重要な臓器(脳など)に出血をしてしまったりすることがあります。
そのほかに、白血病細胞が骨髄の中で増えることにより骨が痛くなることがあります。また、リンパ節や肝臓・脾臓に白血病細胞がたまることによって大きくなり、首や足の付け根などにしこりができたり、お腹が膨らんで見えたりすることがあります。
それぞれの症状の程度は個人差がありますので、すべての白血病の方に同じ症状がでるわけではありませんが、白血病細胞は自然になくなることはありませんので、治療をしないとこれらの症状が進行し、命に関わる状態になってしまいます。

どんな検査をするの?

骨髄検査を行い、診断を確定するとともにALL細胞を採取して細胞の性質を調べます。具体的には、採取した骨髄血を顕微鏡で見ることで、白血病かどうか、ALLかAMLかなどを判断することができます。さらに、白血病細胞の表面に出ているタンパク質の検査(フローサイトメトリー)や染色体・遺伝子検査などによって、より正確に診断すると同時に、白血病細胞の性質の詳細な分類(リスク分類)を行います。骨髄検査は治療への反応性を確認するために、治療中にも行います。
また、ALL細胞の広がりを調べるために、髄液検査や全身の画像検査を行います。特に、ALLは脳や脊髄を取り囲む液体(脳脊髄液)に浸潤しやすいため、髄液検査によって浸潤がないか確認すること、同時に後述する髄注を行うことが重要です。
そのほか、治療前の全身の臓器機能を調べるために、血液検査や生理機能検査を行います。

治りやすさの違いは?

患者さんの年齢、血液検査での白血球数、ALL細胞が持つ性質や治療への反応性によって、治りやすさ(リスク分類)を予測します。B-ALL、T-ALL、Ph1ALL、乳児ALLなどによってリスク分類は異なりますので、詳しくは担当医にご確認ください。
再発した場合も、再発までの期間、再発した場所(骨髄、骨髄外)、再発後の治療への反応性によってリスク分類がなされます。

どんな治療をするの?

ALLを治すためには、薬を使った治療(=化学療法)を行います。ALLではステロイド剤と複数の抗がん剤を組み合わせて治療します。通常の化学療法で治りにくい場合には、ALL細胞の特性に合わせた標的療法や免疫細胞療法を行うこともあります。また、背中から針を刺して、抗がん剤が届きにくい髄腔に抗がん剤を直接注入する治療(髄注)も行われます。

まず、これらの治療により、白血病細胞が骨髄から確認できなくなる「寛解」を目指します。寛解に到達することは第一の目標ですが、寛解を達成してすぐに治療をやめると、高い確率で再びALL細胞が増えてくる(再発する)ため、寛解に到達した後も残っているALL細胞の根絶に向けて化学療法を継続し(強化療法)することが治癒に必要です。上述のリスク分類を行って、リスク毎に治療の強さや期間を調整します。

再発した場合も、ステロイドと複数の抗がん剤、髄注を組み合わせて治療します。ALL細胞の特性に合わせた抗体薬や免疫細胞療法を用いた標的治療を行うこともあります。初発時も再発時も、化学療法や標的治療のみでは治癒率が低いと考えられる患者さんには、造血細胞移植が行われます。造血細胞移植や免疫細胞療法については、JCCG造血細胞移植・免疫細胞治療委員会のページをご参照ください。

どんな合併症があるの?

ALLの治療に用いる薬剤で生じうる主な副作用は以下の通りです。

ステロイド剤

高血圧、糖尿病、感染症、消化性潰瘍、気分変調、骨粗鬆症、緑内障など

抗がん剤

骨髄抑制、播種性血管内凝固、出血、血栓症、吐き気・嘔吐、下痢、口内炎、脱毛、発熱、感染症、発疹、結膜炎、薬に対するアレルギー、心臓・肝臓・腎臓・膵臓などの障害、神経系障害(けいれん、神経麻痺など)、内分泌障害(性腺機能不全、甲状腺機能低下)、二次がんなど

副作用に対してはできるだけ予防する対策を行い、実際に起こった場合にも適切な対処を行います。例えば、感染症に対しては抗生物質などを用いて予防や治療を行います。骨髄抑制にともなう赤血球・血小板の減少に対しては輸血等を行います。抗がん剤による吐き気・嘔吐には制吐剤を投与します。これらを「支持療法」といい、白血病の治療を安全に行うための重要な部分です。詳しくはJCCG支持療法委員会のページをご参照ください。

副作用の多くは、一時的なもので治療が終われば回復します。また、副作用の多くは適切な対応により重症化を防ぐことができます。しかし、重篤な副作用をきたす可能性もあり、なんらかの症状を後遺症として残してしまうことや、命にかかわることもあります。また、内分泌障害や不妊、二次がんなどは、治療が終わった後に何年もたってから明らかになることがあります。詳しくはJCCG長期フォローアップ委員会のページをご参照ください。

どんな治療研究があるの?

JCCGはB-ALL、T-ALL、再発ALL、そのほかに特別な治療が必要なALL(乳児ALL、Ph1ALL)に対して、より良い治療法を開発するための臨床試験を行なっています。
JCCGの臨床試験については、こちらのページもご参照ください。 また患者さんのALL細胞を詳細に解析し、ALLの病態解明や治療開発に向けた研究も行なっています。 詳しくは担当医へご確認ください。

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