固形腫瘍:腎腫瘍

腎腫瘍について

小児の腎臓に発生する腫瘍は、日本では年間70〜100例程度が発症しています。その80%は腎芽腫(ウイルムス腫瘍)という組織型で、3歳未満の乳幼児に多く発症します。その他、稀な組織型として腎明細胞肉腫、腎ラブドイド腫瘍、腎細胞癌、間葉芽腎腫があります。

腎腫瘍委員会とは

JCCG腎腫瘍委員会(Renal Tumor Committee, JCCG-RTC)とは,JCCG(日本小児がん研究グループ)における腎腫瘍に関する研究グループです。

委員長挨拶

2021年度より日本小児がん研究グループ腎腫瘍委員会の委員長に就任した兵庫医科大学小児外科の大植孝治です。
小児腎腫瘍のうち、ウィルムス腫瘍(腎芽腫)は最も頻度の高い腫瘍であり、日本での発症数は年間40-50例程度です。
1990年以前は、欧米の標準治療に準拠してそれぞれ個別に治療が行なわれていて、治療成績も明らかではありませんでした。
そこで、1996年に日本ウィルムス腫瘍研究グループ(JWiTS)が設立され、中央病理診断を導入した統一治療プロトコールによる全国規模の多施設共同臨床研究(JWiTS-1)が開始されました。その結果、米国のNWTSや欧州を中心とした国際小児がん学会腎腫瘍委員会(以下、SIOP-RTSG)と遜色のない治療成績(生存率 70-85%)が得られるようになりました(Pediatr Surg Int 2009, 25: 923-9.)。以来、プロトコールの見直しおよび運営委員会の刷新を図り、続JWiTS-2治療研究では更に良好な治療成績が得られるようになっています(Pediatr Blood Cancer 2018:e27056. )。2015年に日本小児がん研究グループ (JCCG)が設立された時に、JWiTSの治療研究は、JCCGの腎腫瘍委員会に引き継がれ、現在に至っています。
集学的治療による成績の向上にも関わらず、予後不良症例が15%-20%程度にみられることが分かっていて、小児腎腫瘍のさらなる治療成績の向上のためには、予後不良群に対しては治療強度を最大限増加することで生存率を向上し、予後良好群に対しては治療の軽減化による晩期障害の回避を図ることが必要です。そのためには、従来の組織学的分類に加えて遺伝子変異を含む分子生物学的な予後因子により層別化された新しいリスク分類に基づく至適治療の開発が急務の課題です。これらの背景から、分子遺伝マーカー、国際基準による病理組織診断と組織学的リスク分類、国際的に標準化した画像診断と読影結果等を取り入れた国際小児がん学会国際共同臨床研究 (SIOP Umbrella protocol)が開始され、日本もこの研究に参加して、小児腎腫瘍の治療研究を進めています。現在ではこのSIOP Umbrella研究を日本の実情に即して実施するための観察研究UMBRELLA-Jとし、承認を得て、2022年10月より症例登録を開始しています。


兵庫医科大学小児外科
大植 孝治

委員一覧

固形腫瘍分科会委員一覧

臨床研究

活動報告

2023年10月 SIOP-RTSGメンバーとPathology Review Meetingを行いました。
2023年10月 SIOP2023においてJWiTS治療研究における再発腎腫瘍54例の治療成績、ウィルムス腫瘍の外側伸展による外科的リスクについて、それぞれ報告しました。
2023年9月 第65回日本小児血液・がん学会学術集会において、JWiTS/JCCG研究に登録されたRhabdoid tumor of the kidneyの後方視的調査、腎芽腫におけるテロメア伸長とテロメラーゼ非依存的テロメア維持機構の解析について、それぞれ報告しました。
2022年12月 UMBRELLA-J研究への登録を開始しました。

リンク集

JCCG腎腫瘍委員会(JWiTS)ホームページ
がん情報サービス 腎芽腫(ウィルムス腫瘍)
がん情報サイト Cancer Information Japan PDQ®日本語版 最新がん情報 患者さん向け:ウィルムス腫瘍とその他の小児腎腫瘍の治療
国際小児がん学会(SIOP) 腎腫瘍研究グループ(RTSG)ホームページ(英語)
米国小児がん研究グループ(COG)ホームページ 腎腫瘍(英語)
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